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赤沼付近で見たシカ 15.06.06 千手ヶ浜で
千手ヶ浜の九輪草(クリンソウ)は、「この世の極楽浄土」と言えるほどの見ごたえであった。そろそろ帰ろうかなとしていた矢先、「あなた方は、ここに何しに来たの?」と声をかけられた。とっさの事で、「ええっ!!九輪草を見に来たに決まっているんじゃない。」とあっけにとられていると、中禅寺湖面彼方を指差し、「あの景色を見てどう思いますか?」キョトンとしていると通行人も何事かと立ち止まり、いつのまにか人垣ができ皆で話を聞くことになった。話の主は千手ヶ浜の小仙人とよばれ、自然保護観察員・湯の湖荘主人の肩書きを持つ「伊藤 誠」さんである。話によれば、九輪草は伊藤さんが永年に渡りシカの食害から守りながら丹精込めて栽培したもので、花を見に来た人たちに奥日光のシカの食害の現状を知ってもらい、自然を守る手立てをみんな考えようと呼びかけをしているのであった。
1990年代に入ってから奥日光において高山植物や樹木にシカによる食害が多く見られるようになり、1993年度の調べでは、ヒノキや杉の山林など700haに及び、損害額は1億円を越したといわれている。原因はシカの生息数が増えたことで、県全体で4900頭(1996年調査)と推定されている。適正生息数は2900頭と考えられているが、多くなった分生息域が広がり、餌不足からそれまで食べていなかった樹木の樹皮に餌を求めたりすることで被害が出るようになったと考えられている。シカが増えた原因として、天敵がいないこと・暖冬のため冬生き延びる確率が高くなったこと・伐採及び植林や開発により草地が増えたこと等が考えられるが、はっきりしたことは現在調査中とのこと。
冒頭に中禅寺湖面彼方を指差し、「あの景色を見てどう思いますか?」の問いかけは、シカやクマによって、地面から1m50cmの高さまで枝がなく、ずっと遠くまで見渡せるでしょ。あれが食害なのですよ!!ということであった。食害による下草の減少が山の保水力を少なくし、雨が降ると一気に水が流れ落ち、中禅寺湖の水深が上がることも大きな問題であるとも語っていた。
帰りに伊藤さんから、「奥日光とシカと自然」 フロア栃木 14号58~60頁 2006 のコピーを頂いたことが、さらに詳しく奥日光の現状を知る契機にもなった。
シカには何の罪もない。シカは命をつなぐために餌求めているだけだから…。しかしこのままほっとく訳にはいかない。自然だけでの問題ではなく、近い将来必ずシカも人間も共倒れしてしま事は目に見えている。自然保護・共存については、皆で知恵を出し合って考えなければならない正念場に来ているのかな。生きとし生きる全ての命を思う出会いであった。